沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

遠藤周作によるキリスト教を題材にした歴史もの.着眼点は、するどいものがある.日本人とキリスト教という主題は、遠藤の中に重要な主題として生き続けていたのだろうか.作品中に、日本人の井上が、「日本人にキリスト教は合わない」というような発言があるが、個人的にはこの意見に賛成する.それは、ある時には日本人の強みであり、またある時には日本時の弱みなのではないだろうか.ところで、本作品を読んでいて、抱いた感想の一つに、布教活動の傲慢さである.(ちょっと表現が他に思いつかない.)歴史的な背景として、イエズス協会の布教活動と、ヨーロッパ諸国のアジア諸国の植民地化戦略とが、まったく無関係だったとは言えないのではないだろうか.その証拠に、現在の中国政府は、歴史的な背景から、中国国内におけるキリスト教を強く制限しているし、バチカンとの関係も微妙なバランスを保っている.(けっして、融和的な政策を取ってはいない.)ロドリゴの発言に、「神は唯一だ」というような発言があるが、それはキリスト教のエゴというものだろう.それは、まるで、我々のケーキは、君達の和菓子より断然おいしいから、和菓子なんてやめて我々のケーキを食べなさい、と言っているように聞こえる.和菓子を食べるかケーキを食べるかは、食べる人間に選択権があるべきだ!(ただし、この意見は、「布教活動」について語っているのであって、日本がかつてキリシタンを弾圧したことを正当化するものでは決して無い.)