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バナッハ・タルスキーのパラドックス (岩波科学ライブラリー (49))

バナッハ・タルスキーのパラドックス (岩波科学ライブラリー (49))

選択公理を認めることによって成立するバナッハ・タルスキの定理の入門書.公理系から出発する現代数学が抱える無限の不思議さを改めて気づかせてくれる書.バナッハ・タルスキの定理そのものは、本文で述べられていないが、その証明の中で重要となる幾つかのアイディアを丁寧に説明している.定理の証明そのものは、本文後のアペンディクスに説明されている.ユークリッド空間における加算集合間の合同の考え方は、あらためてヒルベルトの無限ホテルの問題を思い出させてくれるし、選択公理の”不思議さ”についても改めて考えさせられた.「数学の基礎 集合・数・位相 斎藤正彦著」の中の選択公理が述べられている箇所で、「この選択公理を読んで、あたりまえと思う人もいれば、そう思わない人もいるであろう」という記述があったが、砂田先生の本書を読んだ後では、けっしてあたりまえとは思えなくなった.