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アンジェラの灰 (下) (新潮文庫)

アンジェラの灰 (下) (新潮文庫)

フランク・マコートの少年期の回想録の後編.フランクマコートの13歳(多分)から19歳までのアイルランドにおける生活を描く.「あまりにも貧しすぎて、もう笑うしかない」生活は更にその凄みを増して行く.そしてフランクにとって衝撃的な母親の行動は、フランクに家出を決意させ、はやくからの自立心を助長させる.彼が育ったような家庭環境の下で経験した様々な出来事は、フランクが幾ら年を重ねても、彼の記憶から消えることはないだろう.そして、彼の自己形成に大きく影響を与えているに違いない.作品全体を通して描かれているアイルランド人のカトリックへの敬虔な信仰は、読んでいて時に感動し、そして時に滑稽で笑ってしまう.(信仰深き人々には失礼な話であるが.)本作品は非常に暗い内容の作品なのであるが、その中ですら成長していくフランクの”タフさ”が描かれている、非常に感動する作品だと思う.あとがきに訳者が書いているように、本作品に対してアイルランド系移民(アメリカ移民)の一世が、強く抵抗を示すことには残念である.ただし、彼ら一世に対して、読んでほしいとは思わない.いや、思えない.