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赤い楯―ロスチャイルドの謎〈1〉 (集英社文庫)

赤い楯―ロスチャイルドの謎〈1〉 (集英社文庫)

19世紀中ごろ、ドイツフランクフルトで生まれたロスチャイルド家の出生、発展の謎を紐解くドキュメンタリー.シリーズ4冊中の第一冊目.第一冊目は、ロスチャイルド家の初代がフランクフルトで生まれる1800年中ごろから、1900年始めの第一次世界大戦の終わりごろまでをカバーする.ロスチャイルド家は、一族の発展にために同族結婚を繰り返す歴史を持ち、その為一見何も関連が無いような歴史上の登場人物が実はその家系をたどっていくとその源流ではロスチャイルド家に繋がる.この本には、このような話がその大半を占め、膨大なロスチャイルド家の人間の名前が出てくる.また、西洋の一族の名前の付け方では、孫が祖父の名前と同一などというケースもまれではなないので、「ネイサン=ロスチャイルド」が何人も出てきたり...そんなの覚えることができるわけねーだろっとつっこみたくなる.また、その一族の関連付けについても、素人目にも「ちょっと強引では?」と思えるような論理展開もあるので、全部を信用する事はちょっと無理.それにもかかわらず、この本はロスチャイルド家がどのような勢力で、どのような歴史を残し、そして現在どのような姿なのかの”触り”を知る上で参考になる資料と思える.しかし、作者の表現能力は最低.文章のいたるところに効果をねらっての特殊な表現が多用されているが、ノンフィクションの文章に要らない表現ばかり.「すでに読者も気づいている通り、この人物もまた、わが一族の一員なのである.」って気づかねーよ.

さらば外務省!―私は小泉首相と売国官僚を許さない

さらば外務省!―私は小泉首相と売国官僚を許さない

2003年夏まで外務省の職員であった上級国家公務員(=キャリア組)の暴露本.日本の国家公務員がいかに腐っているかを暴露する本である.本の出だしは、著者がレバノン(著者の外務省における最後の赴任先)から外務省の本部に投げる意見書の概要で始まり、組織における問題提起が発せられているシーンに思わず「面白そう」と感じるのであるが、本を読んで行くと中身は愚痴の連発である.その内容も浅く、またどうでもいいような愚痴もある.そもそも、著者にそれほどの知性を感じないのが残念.本書を読んで参考になったのは、外務省の職員のレベルの低さを認識することができたことが一つ.本文中にもあるが、現在の国家公務員の採用における人気ランキングは、一位が財務省、二位が???省、そして三位が外務省であるそうだが、三位にはいるほどの外務省でもこの程度かと思ってしまう.あの洗足に御住まいの小和田亘が、次官時代に著者をホテルに呼びつけて缶切りを持参させる話には仰天する.そもそも、日本における「優秀」な人間を図る尺度に疑問を持つべきなのであろう.現在の尺度で計量された「優秀」な人間からなる国家公務員を見ても、なんら知性を感じない.こう書いておいて、自身が他人に知性を感じさせることのできる人間であるかどうか...これからも自己研鑽にはげまなくてはいけない.それからもう一点参考になったのは、外務省の役割が時代と共に変化しつつあること.確かに各省庁の専門性が高くなると、それにつれて各省庁が直接海外で活動する必要が増えてくる.その際、従来の外務省の役割はどこまでになるのか、更には省間の強力体制はどのようにするべきなのか?このような点は、民間企業にもよくある組織上の編成の問題に通じるのではないだろうか.本書の本文にもあるが、各省間は相当仲が悪いらしい.何故か想像し易い.一企業ではなく国家の舵取りをする各省がそのようなことでは、日本という国に幻滅である.この本を読み終えたときの素直な感想は、日本人の組織力という点での限界である.数学者のパフォーマンスや、その他の専門分野における日本人の能力を考えると、日本人は優秀な民族であると思える.(民族などという言葉はあまり好きではないが.)しかしながら、”国”という組織の運営を考えた場合、日本は秀逸な運営を行えているのだろうか?外務省の仕事とは、まさにその”国”という組織の運営における世界規模での”国”のプレゼンスを主張する大役なのではないだろうか?