旅行

2008/mar/13 (Thursday)

プロローグ

Pじろは17:00から始まったミーティングの末席に座り、しきりに腕時計を気にしていた.さきほどから、彼の隣の後輩はミーティングの行方に傾注している.それに比べて自分は心ここにあらず、申し訳ないと思いつつも、徐々に後輩に主役を引き継ぐのは良い傾向だと自分勝手な解釈で納得してもいる.やがて、30分を過ぎると、Pじろは後輩に耳打ちしてミーティングルームから退席した.18:30の成田エクスプレスに間に合う為には、ぎりぎりのタイミングであった.自席に戻ると、今朝自宅から運んだボストンバックに入れた私服を握り締め、トイレでスーツ姿から私服に着替える.夕刻の少しゆっくりしたオフィスには、Pじろの私服姿が異様に写るも、周辺は暖かい目で「いってらっしゃい」と語ってれているような気がする.
成田エクスプレスの指定席に落ち着くと、Pじろはこの数週間、仕事から帰宅し睡魔と闘いながら、インターネットで旅の準備を行ってきたことを思い出す.それは決して十分な準備ではなかったものの、既にこの電車に乗ってしまえば、もう引き返す事は出来ない.旅の途中で臨機応変に対応していけば何とかなると、後は相変わらずのいい加減な性格にすべてを任せようとしている.すると座ったのもつかの間、エールフランスが成田の第一ターミナルか第二ターミナルか分からない.さっそく、オフィスに電話して、後輩にインターネットで調べてもらう.滑り出しからいきなり他人任せである.
 約一時間程度の成田エクスプレスで、Pじろは成田空港の第一ターミナルについた.7:30を回った空港は閑散とし、本当にこんな時間にフライトがあるのかと疑ってしまう.無事チェックインを済ませると、成田からパリまで、及びパリからアテネまでのチケットを手に入れる.チケットに目を配ると、パリ初アテネの出発ゲートが空欄のままである.職員曰く、パリで確認してくれとのこと.まあそんなものかと思い、後は、21:55のフライトまで、空港内をぶらぶらすることに.
 エールフランスは思いのほか心地よいフライトだった.離陸後、しばらくして夕食.オフィスを出てから何も口にしていないPじろは、日ごろあまり夕食を食べないが、旅の間だけは体型などあまり気にしないで食欲に任せて食べようと思っていた.彼が利用したことのある航空会社など高々知れているものの、その中でもエールフランス機内食は彼にとってかなり好感度が高かった.なによりもデザートがおいしいのがポイント高い.機内食にチカラを注ぐのもフランスの国民性なのだろうか?そんなことを思いながら、Pじろは浅い睡眠につく.何度か深夜に目を覚まし、そのたびに、シャンパン、ワイン、アイスクリーム.もう、行くところまで行ってしまえ!
 やがて、飛行機はパリ、シャルルドゴール空港に無事到着する.日の出と共に旅が幕を開けようとしている.

つづく.