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- 読了
- 作者: アーシュラ・K.ル・グウィン,Ursula K. Le Guin,清水真砂子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/05/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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これはゲドの苦悩の物語である.これはテナーの人生の物語である.そして、これは二人の愛の物語である.
超越的な魔法の威力で活躍するゲドを見ることもなければ、若い魔法使いの活躍劇があるわけでもない.そこでは、チカラを無くしたゲドの苦悩と、普通の女としての人生を選んだテナーの苦しみが描かれている.でも、この「帰還」がゲド戦記4作の中で一番好きだ.
人は誰しも老いという不可避な運命を背負いながら生きていく.それはゲドが抱えていた苦しみでありテナーの苦悩なのであろう.それでも、農家として暮らしていく二人には、やがて生きる喜びがやってくるのではないだろうか.
作者Ursula Le Guinは、前作から18年の沈黙を破り、3部作の続編「帰還」を発表した.この18年という時間が、作者の伝えたい”何か”を含んでいると思う.18年後の作品のタッチは、明らかに18年前の作品「さいはての地」と異なり、よりゆっくり、よりしっとり、そしてより大人な作品であろう.