イエスの生涯 (新潮文庫)

イエスの生涯 (新潮文庫)

遠藤周作によるキリスト関連の作品の(自分にとっては)二作目.これは、小説というよりも、小説家遠藤周作としての、新約聖書(または四つの福音書)の解説本.小説家としての理解の下に書かれているという点が、聖書歴史家としてのものと異なる点であり、そこには独自の解釈を展開されている.なるほど、新約聖書におけるキリストの「超常現象の逸話」部分と「博愛の逸話」部分を切り分けて読む必要があるという点には納得できるが、やはり、筆者自身がキリスト教の信者ということもあり、様々な点で筆者独自の聖書解釈が、都合のいいように解釈されていると思う.それでも、彼なりの聖書理解の書として読めば、面白い本である.ただ、その解釈に賛成しかねる箇所も多々ある.

斜陽 (新潮文庫)

斜陽 (新潮文庫)

斜陽族なる流行語をもたらした、太宰文学の代表作、らしい.太宰の作品は、非常に読みやすく、本作品も比較的スムーズに読めてしまった.ただ、本作品に関しては、その話筋の起伏の展開がちょっと単調で、読む前から期待していた部分が大きすぎたこともあり、ちょっと物足りなさを感じてしまった.きっと、本作品は、戦後の混沌とした状態からの「貴族」の変貌という主題があるのだろうが、「貴族」なるものがいまいち自分の中で現実味を持たないので、本作品にものたりなさを感じてしまうのかもしれない.しかしながら、本作品を読んで感じたのは、自分は「直治」のような「貴族であることの悩み」は到底理解できないということである.つまり、自分は生粋の「民衆」なのだと思う.それはそれで良いのであろう.だからこそ、雑草根性を持って自分の好きなことを勉強できるのだと思う.