天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)

天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)

前作「天使の卵」から10年の歳月を経た主人公達の”その後”の物語.物語は、カフェテリアにお客としてやってくる斉藤先生、夏姫、に気づくアルバイト慎一の目線で始まる.

8歳も年下なのに、夏姫は慎一と付き合ってしまうんだー、とか、夏姫はまだ歩太のこと好きなのかなー、とか考えながら読み進めていくのだが、後半に入り、歩太の実家における歩太の科白が、本作品の一番盛り上がる部分だと感じた.

前作が秀作であればあるほど、次回作にかける期待は大きくなる.それだけに、一般的に次回作は大変だが、本作が前作を凌げる有利な部分の一つは、10年という年月の使い方だと思う.歩太と夏姫の会話の中に、彼女たちがどのような10年間を過ごして来たか、それを読み手に想像させることで、本作品は非常に効果的な作品となっているのではないだろうか.

長い年月を効果的に使用する作品はとてもすばらしいと思う.

なんて、恋愛小説を分析する自分に辟易してしまうが、そんなこと考えず、作品の世界にしっとり入り込む事のできる良い作品ではないだろうか.

ただ、本作品を読んでいて、素敵な恋愛ができていない自分の日常を振り返り、とても落ち込んでしまいそうになる.

前作を読んだ人にとってはとても気になる作品ではないだろうか.