主演女優であるIMELDA STAUNTONの演技がすばらしい.前半から中盤にかけては、幸せな家庭を支えている働き者の主婦で貧しい中にも幸せに暮らしている主人公がいるのだが、堕胎を受けた女性の容態が急変し医者に通報されてから、彼女の人生が急変する.この流れの中での彼女の感情の変化が非常にリアルに演じられている.彼女が警察に逮捕された後、夫が彼女を支え続けるところには胸を打たれる.息子が母親を非難するが、父親が息子に母親を許すように諭す場面にも心打たれる.愛する人を最後まで信じるというシンプルでいながらなかなか出来ないシーンに心を打たれてしまう.
それにしても、世の中は不条理な事実の連続なのだと、改めて感じさせられる映画であった.
それから、堕胎をテーマにすることもキリスト教圏ならではのことだろうか.しかも、イギリスだからこそ、そのテーマを持ってくることができたのかもしれない.日本で本作があまり話題に上らなかったのは、日本人がそれほど堕胎について関心を持たないからだろうか.